ハイキューは名言と伏線回収にあふれた漫画です。たくさんのレビューでいろんな解説がされていますが、僕が一番好きなのは日向と影山の「俺が居ればお前は最強だ!」です。
そして、結論から言うと、この台詞は伏線回収です。ただし、回収されているのは台詞そのものではなく、日向と影山の関係です。
日向と影山が烏野高校で再会した時、日向は、誰よりも跳べるけれど、バレーボールは初心者で、二人のバレーの実力には雲泥の差がありました。しかし、時を経て、当時の影山が「俺がお前を活かしてやる」と言う意味で日向に向かって放った言葉を、最後に日向が影山に返す場面があります。
その間に何があったのでしょうか。そして、日向がその言葉を返した真意は何だったのでしょうか。この記事では、バレーボール初心者の日向が、影山と出会い影山に活かされながらも自身でも成長を続け、最後には、影山に認められる存在になるまでの軌跡を追いかけます。
影山が「俺が居ればお前は最強だ!」と言った理由

第23話「同じ1点」で「俺が居ればお前は最強だ!」と言った時、影山は日向を励ましていたわけじゃありません。「こいつは使える奴だ」と感じていただけで影山が日向を“相棒”として見ていたとは思えません。自分にとって都合の良い“武器”を見つけた瞬間に発した言葉だと思っています。
日向は、バレーは下手くそだけど放っておけない素材だった
高校入学時に影山と出会った頃、日向はほぼバレーボールの素人です。身長も高くないし、レシーブもサーブも、試合経験だって足りない。トスに合わせる技術もない。それでもコートの中で妙に目立つのは、身体能力が高いからなんですよね。跳ぶ高さが違う。一歩目の速さが違う。ボールに食らいつく勢いも違う。バレーそのものは下手なのに、その身体能力だけは影山の目を止めるだけのものがありました。
変人速攻は、日向が影山に使われるところから始まった
この頃にできた二人の技が変人速攻です。日向が超人的なスピードとジャンプ力でブロックを振り切り、影山の天才的なトスは、日向がスパイクで振る手にドンピシャのタイミングでボールを合わせる技です。でも、変人速攻は二人が対等だから生まれたものじゃありません。日向は影山を信じて目をつぶって飛び込んでいます。影山はその無茶な動きにぴたりとボールを通す。この時点で主導権を握っているのはどう見ても影山です。
だから「俺が居ればお前は最強だ!」という言葉も、やさしい言葉ではありません。俺様が居れば、お前の身体能力は活きる。俺が使えば、お前は武器になる。あの台詞は、影山のそういう思い上がりが入った言葉なんです。けっして、きれいな友情の始まりではありません。影山が日向を“点を取るための武器”として使い始めた頃の言葉として読むべきです。
日向は、使われることを嫌がるより先に飛び込んだ
ここで日向がいいんですよね。自分がまだ下手くそだということを、たぶん本人がいちばんわかっている。だから影山に使われることを変なプライドで拒まない。まずコートに立ち、飛んで、点を取る。影山のトスに全力で乗っかって、自分のできることに全力を尽くす。
自分だったらこんな役回りプライドが許さない。だから、最初は日向のことを理解できなかった。でも逆に、変人速攻で得点を重ねるたび、報われなくても毎回全力で飛び続ける日向の潔さを見るたびに、応援したくなる気持ちを抑えられなくなりました。
変人速攻が止められた日(インター杯の青葉城西戦)

IH予選の青葉城西戦で、変人速攻が止められて烏野は負けます。この負けは、日向にとってただの負けじゃありません。やっとコートに立つことができた武器が、あっけなく封じられます。日向は、影山に使われる武器のままでは限界があると、痛い形で思い知らされたのです。
青葉城西は、変人速攻の派手さに飲まれず、その先まで見ていた
序盤の変人速攻は、本当に気持ちいい。速い。派手。決まった瞬間に空気がひっくり返る。読んでいるこっちまで、「このまま押し切れるかもしれない」と思わされるんですよね。
しかも、あの速攻が相手にとって脅威だったからこそ、日向のジャンプを囮にして他のアタッカーも使えるようになった。ブロックが日向に寄れば、別のスパイカーが空く。烏野の攻撃は一気に広がりました。後に「最強の囮」と呼ばれる役割の輪郭は、もうこの頃から見え始めていたんだと思います。
でも、及川のいる青葉城西はその勢いに飲まれない。見たこともない変人速攻の弱点をすぐに見つけます。日向が目をつぶって跳ぶことに気がつくのです。影山はそこへ寸分違わずトスを通す。形としては完成しているように見える。でも、日向自身は最後の選択を握っていない。どこへ落とすか、どう抜くか、その決定権がまだ日向の中にはない。及川はそこを見逃さないんです。速いだけでも脅威にはなる。でも、スパイクの瞬間を読めたら止めることはできる。
止められた瞬間、日向は「使われるだけでは届かない」と知る
この試合の最後に、変人速攻がついに止められます。あの終わり方はきつい。いちばん気持ちよく決まっていた武器が、いちばん大事な場面で通じないんですから。
しかも、あの一球で折られたのは速攻だけじゃありません。日向の現在地そのものです。武器にはなれた。囮としても機能し始めていた。でも、その武器を自分で使いこなすところまでは、まだ行けていなかった。だから止められた時に、次の一手がない。影山のトスで点を取るところまでは来た。でも、影山に使われる武器のままでは、青葉城西の壁を越えられない。IH予選の敗戦は、そのことを見せつけました。
この負け方をしたから、日向は先へ行かざるを得なくなる
IH青葉城西戦では、影山に使われる形でコートに立った。そして、同じ速攻を続けるだけでは足りない。影山に使われるだけの武器では届かない。じゃあ、どうするのか。その問いを、日向はここで突きつけられた。
目を開けて打たなきゃ前へ進めない。でも、目を開けて打つと上手くボールを打てない。影山に相談しても「下手くそなんだから、今のままでやるしかない」と言われて喧嘩する始末。でも、ここからが日向の最も日向らしいところ、周りを巻き込んで、影山に協力させることに成功。そして、ついに、目を開けたままの変人速攻を完成させます。
だからこの試合は、ただ悔しい敗戦じゃない。日向が次の段階へ行くために、どうしても必要だった負けだと僕は思っています。ここで止められたからこそ、日向は目を開けて、自分で選んで、自分で決めて打つ側へ進まざるを得なくなった。その意味で、この敗戦は痛いけれど、ものすごく大きいんですよね。
日向はなぜ影山に同じ言葉を返したのか|伏線回収の意味

第142話「強さのかたち」で、日向が影山に「俺が居ればお前は最強だ」と返す場面。ここ、本当に気持ちいいんですよね。
ただ同じ台詞が戻ってきたからじゃない。IH予選では、日向は影山に使われる武器でした。でもこの場面では違う。今度は日向の方が、影山を前へ押し出す側に回っている。その立場の変化が、あの一言だけで一気に伝わってくるんです。
同じ青葉城西との再戦だから、日向の言葉が軽くならない
舞台は春高予選。相手はまた青葉城西なのが因縁めいています。IH予選で、自分たちの速攻を止められた及川のチームです。
しかし、この頃の日向は以前の目をつぶって跳ぶだけの選手じゃない。相手の位置を見る。ブロックを見る。速攻の中に、自分の判断を入れている。影山のトスで武器にしてもらう側だった日向が、たったの半年でここまで来ている。だから第142話で同じ言葉を返しても、借り物の台詞に聞こえないんです。影山からかけられた言葉を、今度は自分の足でコートに立って返しているからです。
日向は、この場面で影山を前へ押し出している
試合の中で影山が少し弱気になる場面があります。試合の流れが相手へ流れる。ほんの少し、空気が沈む。その時に影山に声をかけたのが日向です。「俺が居ればお前は最強だ!」。あそこでページをめくる手、止まりますよね。
だって、最初にその言葉を受け取った側の日向が、今度は影山の背中を押しているんですから。IH予選では影山が日向を使っていた。しかし、春高予選では、日向が影山に檄を飛ばす。ここの入れ替わりが、たまらない。気の利いた切り返しなんかじゃないんですよね。沈みかけた影山を、コートの真ん中へ引き戻すための一言になっている。日向はもう、ただの使われる武器ではありません。
最後の一球まで日向に託されるから、日向は「認められる側」へ届く
さらに感動的なのが、この試合があの台詞だけで終わらないことです。第3セットの最後、影山が試合を決めるトスを上げた先は日向でした。ここまで来て、ようやく全部つながるんですよね。言葉を返しただけでは終わらない。そのあと、勝負の一球まで託される。影山が最後に選んだのが日向だった。
僕はここで、日向が影山に「認められる存在」になったんだと思いました。最初は、影山に使われることでコートに立った。IH予選の青葉城西戦では、そのままでは勝てないと知らされた。そして春高予選の青葉城西戦では、影山へ言葉を返し、最後の一球まで託される。あの台詞が熱いのは、同じ言葉だからじゃない。日向がそこまでたどり着いたことが、試合の流れ全部で証明されるからです。
日向は足りなさのあとで何を選んだのか

最初から何でもできたわけじゃない。むしろ、バレーだけ見ればかなり下手くそなところから始まっている。日向の成長って、ここがいいんですよね。それでもコートに立つ。点に絡む。影山に使われるところからでも腐らない。そして、その立場のままで終わらない。僕が日向を見ていていちばん痺れるのは、足りなさを知るたびに、ちゃんと次の手を選んでいくところです。
変人速攻は、日向が「使われる側」で終わらないための最初の一歩だった
高校に入ったばかりの日向は、完成された選手じゃありません。身長は高くないし、レシーブもサーブも荒い。試合運びだってまだまだです。でも、跳ぶ力だけは目を引く。その身体能力を、いちばん早く武器にしたのが影山でした。第23話「同じ1点」でできた変人速攻は、まさにそこから始まっています。
ここで大事なのは、日向がその立場を嫌がらなかったことです。影山に使われる武器から始まる。きれいに言えば相棒の始まりですけど、もっと生っぽく言えば、まずは使われるところからコートに食い込んだ。僕はここが日向の強さの本質だと思っています。全部できるようになってから前へ出るんじゃなくて、いまできることで、まず前へ進む。その一歩を切れることが、日向の強さの秘訣だと思います。
最強の囮になったことで、日向は「使われる武器」から一段上がった
でも日向は、影山のトスで点を取るだけの選手では止まりませんでした。変人速攻が脅威になったぶん、自分にブロックを集めて、他のスパイカーにトスを譲る囮の役割まで背負うようになる。ここで日向は変わります。自分が打って終わりじゃない。自分が動くことで、味方の得点まで動かす側へ回り始めるんですよね。
しかも日向は、この役割をいやいや引き受けていない。何度も走る。何度も跳ぶ。自分が決めなくても相手を揺らす。派手な得点シーンだけ見れば脇役っぽくも見える仕事を、日向は自分の武器として使う。ここがたまらないんです。まだ足りないものが多い。だったら、いま持っているものをいちばん厄介な形で使う。そうやって日向は、「影山に使われる武器」から「自分で試合を動かす選手」へ少しずつ変化していきます。
足りなさをごまかさなかったから、日向は影山の隣まで行けた
ただ、そこで満足しないのが日向です。IH予選の青葉城西戦で、変人速攻だけでは最後の壁を越えられないと知る。影山に使われる武器であるだけでは足りない。その現実にぶつかったあとで、日向は目をつぶって跳ぶだけの選手から、自分の目で見て、自分で選んで打つ側へ進んでいく。
その積み上げがあるから、春高予選の青葉城西戦で「俺が居ればお前は最強だ!」と影山へ返せるんですよね。最初は影山に利用される側だった。次に、最強の囮として自分の役割を武器にした。そして最後には、焦りかけた影山の傍で冷静さを取り戻すきっかけを作る。ここまで来て、ようやく日向は「使われる武器」ではなく、影山が相棒と認め、勝負を預ける選択肢になる。
日向の成長が気持ちいいのは、いきなり全部を手に入れないからです。まずはいまある武器で前へ出る。次に、その武器でできる役割を広げる。そこで足りないものを知ったら、今度はそこを越えにいく。この順番を逃げずに踏んでいる。だから最後に、影山の隣であの言葉を返しても浮かないんです。僕には、日向の強さって才能の派手さより、足りないまま今できる役をこなし、足りないからこそ次の役割を探すところにあるように思えます。
「俺が居ればお前は最強だ!」が伏線回収として面白い理由

僕は、「俺が居ればお前は最強だ!」をただの名言ではなく、日向と影山の関係まで回収する伏線として読んでいます。理由は、同じ言葉がもう一度出るからではありません。IH予選前に影山が言った言葉が、春高予選では日向の口から影山に返ってくる。試合を決める最後のスパイクは、影山が日向にトスで託す。ここまで来たら作者の意図は明白でしょう。同じ言葉なのに、使い方や、意味がまるっきり違う。この名言の伏線回収はお見事としか言いようがありません。
そして最後は、日向の生きざまに大変勉強させられました。誰かに活かされるところから始まってもいい。日向はそこから始めて、そのままでは終わりませんでした。
最初は一人じゃ何もできない素人が、素人なりにできることを精一杯やり続け、最後は天才に相棒として認められるところまで成長する。よくスポーツ漫画で見るストーリーですが、日向の場合は、自分一人じゃできない。だから囮でも何でも自分がチームの勝利に貢献できることを徹底的にやり続ける。その傍らで、できないことを埋めていく。その結果、先行している仲間に認めてもらう。
言うのは簡単だけど、やるのは簡単じゃない。
FAQ
日向が影山に「俺が居ればお前は最強だ」と返したのは何話ですか?
第142話「強さのかたち」です。春高予選の青葉城西戦で、及川を前にした影山へ日向が返します。
影山が最初に「俺が居ればお前は最強だ」と言ったのは何話ですか?
第23話「同じ1点」です。変人速攻が武器として立ち上がる流れの中で出てきます。
IHの青葉城西戦と春高予選の青葉城西戦では、何がいちばん違いますか?
いちばん大きいのは、変人速攻の中身です。IHでは、日向はまだ目をつぶって跳ぶ形でした。春高予選では、相手を見て打つ形へ進んでいて、同じ速攻でも意味が変わっています。
春高予選の青葉城西戦で最後に決めたのは誰ですか?
日向です。影山のトスを受けて、ブロックアウトで試合を決めました。
この記事で日向を主役にしているのはなぜですか?
今回追いたかったのが、最初は影山に使われる武器だった日向が、どうやってその位置を変えていったのかだったからです。影山との関係をたどりながら、日向がどこまで来たのかを軸にしています。
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参考情報
- 『ハイキュー!!』第23話「同じ1点」(少年ジャンプ+)
- 『ハイキュー!!』第142話「強さのかたち」(少年ジャンプ+)
- 『ハイキュー!!』3巻(集英社 S-MANGA)
- 『ハイキュー!!』16巻(集英社 S-MANGA)
- 『ハイキュー!!』17巻(集英社)
- 『ハイキュー!!』43巻(集英社 S-MANGA)
※ 作中のセリフ、試合展開、巻数・話数は、原作および公式掲載情報をもとに整理しています。
※ 日向と影山の関係性や心理については、作中描写を踏まえた僕の考察です。


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