『ブルーロック』の糸師凛に感じる怖さはシュートの上手さだけじゃありません。
相手の動き、味方の位置、ゴールまでの道筋。凛はそれらを冷静に見たうえで、最後は自分が勝てる場所へボールと人を寄せていく選手です。
誰かに合わせて輝くというより、自分が勝つための形を先に描いて、そこへ周囲を巻き込んでいく。そこに、凛の一人だけ温度が違うような怖さがあります。
その感じを現実の日本代表で重ねるなら、僕は久保建英選手の右サイドを思い出します。
久保選手も、ボールを受けてから慌てて考える選手ではありません。ボールが来る前に首を振り、相手との距離を測り、味方の動きまで見たうえで、縦へ行くのか、内側へ入るのか、味方を使うのかを選んでいるように見えます。
だから僕には、糸師凛と久保建英が重なる瞬間があります。
二人とも、相手が用意した形にそのまま乗らず、先に一つだけズラしにいく選手だからです。
もちろん、糸師凛と久保建英選手は同じ存在ではありません。一人は漫画のキャラクターで、一人は現実の日本代表選手です。プレーの文脈も、背負っているものも違います。
久保選手は味方を使い、チームの中で違いを作る選手です。凛のように、周囲を力ずくで自分の勝利へ飲み込むキャラクターとは違います。
それでも僕は、凛を読んだあとに久保選手の右サイドを見ると、ボールを受ける前の首振りや、相手を止める一拍に、似たものを感じてしまいます。
今回は、凛を読んだあとに久保選手を見ると、僕がなぜ右サイドの一拍に目を奪われてしまうのか。その感覚を、できるだけ場面に沿って言葉にしていきます。
糸師凛はなぜ、相手の得意な形まで壊しにいくのか

糸師凛を見ていて怖いのは、相手の弱点だけを狙うところではありません。
むしろ凛は、相手が一番自信を持っている形に踏み込むことがあります。
U-20日本代表戦の後半、凛は相手の得意な動きや守り方を見たうえで、そのいちばん高い場所を叩きにいきます。普通なら避けたい場所へ、わざわざ入っていくんです。
僕はあの場面を読むたびに、少し息が詰まります。
相手に「これなら勝てる」と思わせたうえで、その瞬間に上から奪う。弱点を探すだけならまだ分かります。でも凛は、相手の得意な形ごと壊しにいく。
守る側が正解を選んだはずなのに、その正解ごと上から踏まれるような感覚があります。そこが、ただの攻略とは違うんです。相手の動きだけではなく、「この形なら大丈夫だ」という自信まで折りにいっているように読めます。
空中戦が強い相手なら、普通は空中戦を避ける。スピードがある相手なら、先に距離を取る。現実的に考えれば、相手の武器を出させない方が安全です。
でも凛は、そこに入っていく。相手が一番気持ちよく勝てる形を引き出し、そのうえで叩き折る。
このプレーを読むと、僕は「強い」というより、まず怖いと思ってしまいます。
凛のエゴは、ただ「俺が上手い」と言っているだけではありません。僕には、「お前の正解ごと、俺が壊す」と言っているように読めるんです。
周囲がパスコースや連携を探しているとき、凛はもっと冷たい場所を見ている。誰が何を得意としていて、どの瞬間に自信を持ち、その自信がどこで隙に変わるのか。そこを見つけたら、迷わず刺しにいく。
糸師凛は、能力が高いから一人で立っているのではなく、自分が勝つための道を他人に預けないから一人に見えるんだと思います。
そしてこの読み方が、久保建英選手のプレーを見たときに、ふっと戻ってくるんです。
久保建英の一拍早さは、ボールを受ける前に始まっている

久保建英選手のすごさは、ドリブルで抜いた瞬間だけを見ても、少し取り逃がしてしまう気がします。
もちろん、足元の技術は圧倒的です。右サイドでボールを受け、細かいタッチで相手を止め、内側へ入って左足を振る。あの形だけでも十分に怖い。
でも、僕が久保選手を見ていて一番ぞくっとするのは、ボールが足元に入る前です。
僕は久保選手が右サイドで受ける場面になると、ついボールではなく首の動きを見てしまいます。背後に誰がいるのか、相手との距離はどれくらいか、味方はどこへ走ろうとしているのか。その確認が一瞬で入るから、ボールが届く前の時間が妙に濃く見えるんです。
ボールが来る頃には、もう「受けてから考える時間」ではない。縦へ行くのか、内側へ入るのか、味方を使うのか。その選択肢が、足元に届く前から並んでいるように見えます。
2023年9月のレアル・マドリード戦では、開始5分に久保選手のパスからアンデル・バレネチェアの先制点が生まれました。試合自体はレアル・マドリードが2-1で逆転勝利しましたが、久保選手の右サイドからの仕掛けは、相手に何度も判断を迫っていました。
あの場面の久保選手は、ただ上手い選手ではありませんでした。
相手が「縦を切るのか」「内側を消すのか」「寄せるのか」「待つのか」を決める前に、その迷いを作っていた。
ここが、凛と重なります。
凛が相手の得意な形を見たうえで壊しにいくように、久保選手もボールを受ける前から相手の選択肢を少しずつ狭めている。
だから久保選手が右サイドでボールを待つ場面になると、僕は「次に何を見るんだろう」と少し前のめりになります。相手の重心が縦を警戒しているのか、内側を閉じようとしているのか。味方の走りを使うのか、自分で運ぶのか。その選択が、ボールタッチの前から始まっているように見えるんです。
孤高というと、周りを無視する人のように聞こえるかもしれません。でも久保選手の場合は、少し違います。
久保選手は、味方だけを見ているわけでも、相手だけを見ているわけでもありません。右サイドでボールを待つあの短い時間に、味方の走り出しと守備者の距離、その間にできる小さな隙間をまとめて拾っているように見えます。
そして、見た情報を自分の一手へ変える。
誰かの正解をなぞるのではなく、自分の足元に来たボールから試合の流れをずらしてしまう。久保選手の一拍早さは、足の速さではなく、ボールを受ける前から相手を動かしているところにあると思います。
似ているのは性格ではなく、相手の予定を少し狂わせる瞬間

ここで一度、二人の違いもはっきりさせておきたいです。
久保建英選手は、糸師凛そのものではありません。
久保選手は、味方を使う選手です。右サイドで相手を引きつけ、内側の味方を使い、逆サイドへの展開も選ぶ。ソシエダでも日本代表でも、個人で打開するだけではなく、周囲との距離感で相手を動かす場面が多い選手です。
一方で、糸師凛はもっと破壊的です。自分の勝利のために、相手の形も、味方のリズムも、必要なら飲み込んでいく。
だから「久保建英は現実の糸師凛です」と言うつもりはありません。むしろ、そこを雑に重ねると、久保選手にも凛にも失礼になると思っています。
僕が重ねたいのは、性格ではありません。プレースタイル全体でもありません。
自分から先に仕掛けて、相手の予定を少し狂わせる瞬間です。
凛は、相手の得意な形を引き出して、その最高点で壊す。久保選手は、ボールを受ける前から相手の重心と味方の位置を見て、次の一手を選ぶ。
やっていることは違います。
でも、二人を見ていて面白いのは、流れてきたボールや状況をそのまま処理している感じがしないところです。凛は相手が得意な形に入った瞬間を狙うし、久保選手はボールが届く前から相手DFの足を止める準備をしているように見えます。
この記事は、糸師凛と久保建英選手を同じ存在だと決めるためのものではありません。
むしろ、ブルーロックを読んできたあなたに、久保選手のプレーを見るための小さな双眼鏡を渡す記事です。
ゴールの瞬間だけではなく、ボールが来る前の首振り、相手との距離、軸足の置き方を見る。その手前に、自分のプレーで流れを変えようとする選手のエゴがあると思うんです。
だから次に久保選手を見るとき、僕はボールタッチそのものより少し前を見たい。
右サイドで久保選手が一度顔を上げたとき、僕はついボールより相手DFの足を見てしまいます。縦を警戒して半歩下がるのか、内側を消そうとして腰をひねるのか。そこを見ていると、久保選手がまだ触っていないのに、もう相手を少し動かしているように思えるんです。
あの一拍を見ると、凛が相手の動きを先に読んで、場を自分の方へ引き寄せる感じを思い出します。
東京五輪の涙と、僕が会議で黙ってしまう理由

久保選手といえば、僕は2021年の東京五輪の試合後に流した涙が強烈に印象に残っています。
U-24日本代表は3位決定戦でメキシコに1-3で敗れ、4位で大会を終えました。JFA公式レポートでは、試合序盤にメキシコが主導権を握り、日本が13分と22分に失点した流れが記録されています。
試合後、久保選手はピッチで涙を流しました。
Jリーグ公式の選手コメントでは、久保選手が「自分が決めていれば、自分がアシストしていたら、自分がPKとっていたら」と、いろいろなことが頭を巡っていたと語っています。
この言葉を読んだとき、僕は胸の奥が少し重くなりました。
悔しかった。メダルを獲りたかった。勝って終わりたかった。もちろん、そういう思いもあったはずです。でも、それだけでは少し足りない気がしたんです。
あのコメントには、「自分が何かを変えられたかもしれない」という痛みが残っているように感じました。
久保選手は、若い頃からずっと期待されてきた選手です。バルセロナの下部組織、FC東京、海外挑戦、日本代表。常に何かを証明する場所に立ってきた。
だからこそ、あの涙には「よく頑張った」では自分を許せない人間の厳しさがあったと思います。
ここに、糸師凛と重なるものがあります。
凛もまた、勝てなかった自分を簡単には許しません。兄・糸師冴への執着、潔世一への対抗心、自分がピッチを支配することへのこだわり。凛は誰かに慰められて立ち直るタイプではなく、勝つことでしか自分を納得させられない選手です。
もちろん、久保選手の涙と、凛の怒りは同じものではありません。
でも、どちらにも「自分がやれたかもしれない」と考え続ける厳しさがあります。だから二人のプレーは、ただの強気には見えないんです。
ここまで考えたとき、僕はふと、自分の日常を思い出します。
会社の会議で、言いたいことを飲み込むことがあります。上司の顔色を見て、波風が立たない言葉を選ぶことがあります。「自分はこうしたい」より先に、「これを言ったら面倒にならないか」を考えてしまう。
そういう日って、帰り道に少しだけ自分が薄くなったような感覚が残るんです。
ピッチで久保選手がボールを受ける前の一拍と、会議室で僕が発言する前の一拍は、もちろん同じものではありません。
でも、どちらにも「ここで自分の考えを出すのか、それとも空気に預けるのか」という小さな分かれ道があります。
だから僕は、久保選手や凛のプレーを見ると、ただすごいと思うだけでは終われないんです。
現実の仕事で凛みたいに振る舞ったら、たぶん大変です。会議室で「お前の正解を壊す」みたいな顔をしていたら、普通に嫌われると思います。
でも、全部を真似する必要はありません。
たとえば会議の前に、一つだけ自分の図面を持っておく。相手がこう来たら、自分はこう返す。この論点だけは流されずに言う。そんな小さな準備でも、何も考えずに頷いて終わる日とは違うはずです。
久保選手や凛の“わがまま”に僕が惹かれるのは、彼らが自分勝手だからではありません。自分で選んだ結果を、他人に逃がさないように見えるからです。
結論:糸師凛と久保建英の孤高は、外した責任まで自分で持つところにある

糸師凛と久保建英選手が重なるのは、プレースタイルが同じだからではありません。
凛は、相手の得意な形を引き出して、その一番高い場所で壊す。久保選手は、ボールを受ける前から相手の重心と味方の位置を見て、次の一手を選ぶ。
二人のやり方は違います。
でも、二人とも流れてきた場面をそのまま受け取って終わる選手ではありません。凛は相手の得意な形に入っていくし、久保選手は相手DFの足が止まる前から次の一手を用意しているように見える。
そこに、僕は“王者のエゴ”を感じます。
僕が二人に“王者のエゴ”を感じるのは、強そうに振る舞っているからではありません。自分で選んだプレーが外れたとき、「味方が悪い」「流れが悪い」で済ませず、たぶん一番きつい顔で自分に返してしまう。そこまで含めて、前に出ているように見えるからです。
次に久保建英選手が右サイドでボールを受ける瞬間が来たら、僕はボールタッチそのものより、その直前を見たい。
首を振ったあと、久保選手がどこを見るのか。相手との距離をどう測るのか。味方の走り出しを待つのか、それとも自分で運ぶのか。そこまで追うと、ボールが足元に届く前の数秒が急に面白くなります。
ブルーロックで糸師凛の孤高に震えた人なら、久保建英選手の一拍にも、きっと似たものを見つけられると思います。
そして、もしあなたが日常のどこかで、空気に合わせて自分の言葉を飲み込んでしまうことがあるなら。
いきなり凛みたいにはなれません。久保選手みたいに、一瞬で全部を見られるわけでもありません。
でも、会議の前に「この一点だけは言う」と決めておくくらいなら、僕にもできます。実際、それすらできない日もあります。結局うなずいて終わって、帰り道で「あれ、言えばよかったな」と思う日もある。
だからこそ、久保選手がボールを受ける前に首を振るあの数秒が、僕には少し眩しく見えます。凛みたいに世界をねじ伏せることはできなくても、自分の一手を先に用意しておくことはできる。僕にとっては、それがブルーロックの“エゴ”を現実に持ち帰る一番小さな方法です。
FAQ|糸師凛と久保建英に関するよくある質問
糸師凛と久保建英は本当に似ていますか?
プレースタイルそのものが同じという意味では似ていません。久保建英選手は味方との関係性を使いながら右サイドで違いを作る選手で、糸師凛は『ブルーロック』の中で相手の得意な形まで壊しにいくキャラクターです。
ただ、二人とも「相手がこう来るだろう」と思っている形を、先に少しズラすところでは重なります。この記事では、そこを比較の軸にしています。
糸師凛のエゴは、ただの独りよがりではないですか?
凛のプレーには、独りよがりに近い危うさがあります。そこが彼の怖さでもあります。
ただ、凛は相手の得意な形、味方の動き、ゴールまでの道筋を見たうえで、自分が一番勝てる選択を押し通します。だから単なるわがままではなく、勝利への執着として読めるのだと思います。
久保建英を見るとき、どこに注目すると凛っぽさを感じられますか?
ボールを持ったあとではなく、ボールが来る前を見るのがおすすめです。
首を振るタイミング、相手との距離、軸足の置き方、縦を見せて内側へ入る準備。そこを見ると、久保選手が相手を抜く前から、すでに守備者の選択肢を削っていることが分かりやすくなります。
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参考情報・公式ソース
この記事は、『ブルーロック』を継続して読んでいる筆者アキラが、久保建英選手の公開情報・試合記録・プレーの印象を確認したうえで書いた考察です。専門的な戦術分析ではなく、作品考察とサッカー観戦者としての視点を合わせています。
漫画の設定と実在選手の能力を同一視するものではありません。参考情報は2026年4月26日時点で確認しています。
- 講談社公式|『ブルーロック(17)』:U-20日本代表戦周辺の巻情報確認
- JFA公式|U-24日本代表 1-3でメキシコに敗れ、東京オリンピックを4位で終える:東京五輪3位決定戦の試合経過確認
- Jリーグ公式|東京オリンピック メキシコvs日本 選手コメント:久保建英選手の試合後コメント確認
- JFA公式|FIFAワールドカップカタール2022 ドイツ戦 試合結果:久保建英選手の先発、試合結果、得点者の確認
- レアル・ソシエダ公式|Takefusa Kubo 選手プロフィール:所属・基本プロフィール確認
- ESPN|Real Madrid 2-1 Real Sociedad Match Report:開始5分の久保建英選手のパスからバレネチェアの先制点が生まれた場面の確認
著者メモ
文:アキラ
ブルーロック考察と日本代表観戦を中心に記事を書いています。この記事では、糸師凛と久保建英選手を「同じ選手」としてではなく、『ブルーロック』を読んだあとに久保選手のどこを見ると面白くなるのか、という視点で比較しました。試合情報はJFA、Jリーグ、クラブ公式、海外メディアなどの公開情報を確認し、考察部分は筆者個人の見方として記載しています。


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