『ブルーロック』はなぜ面白い?日本代表にW杯優勝してほしい“僕たちのエゴ”から考察する

ブルーロックのエゴと日本代表のワールドカップ優勝への夢を重ねた、青い炎に包まれるサッカースタジアム 映像考察

2022年のドイツ戦を見たあと、僕は日本代表への期待値が変わりました。

それまでは、どこかで「ベスト8に行けたらすごい」と思っていました。もちろん、それだって簡単なことじゃない。日本サッカーにとって、とんでもなく大きな壁です。

でも、堂安律の同点弾と浅野拓磨の逆転弾を見たあとから、僕は少し欲深くなってしまいました。ベスト8で満足できなくなったし、「優勝」という言葉を、冗談ではなく考えるようになったんです。

しかもその時、僕はまだ『ブルーロック』を読んでいませんでした。

あとから『ブルーロック』を読んで、ようやく腑に落ちました。あの時、自分の中で膨らんでいた感情は、日本代表にもっとエゴを出してほしい、ゴールに執着してほしい、という欲だったんじゃないかと。

本田圭佑の頃から見たかった「俺が決める」という姿勢。堂安、久保建英、三笘薫、伊東純也のように、自分の武器で局面を動かす選手たち。そういう選手が増えてきた感覚があったから、僕はもう日本代表に“善戦”だけを求められなくなりました。

この記事では、『ブルーロック』の面白さを、キャラや試合展開だけではなく、日本代表にW杯優勝を求めてしまう僕たちサッカーファン兼作品ファンのエゴから考察していきます。

『ブルーロック』は、最初から日本代表のW杯優勝を置いている

満員のサッカースタジアムの上空に青い炎が渦巻き、日本代表のワールドカップ優勝への夢を象徴する光景満員のスタジアムのイメージ(AI生成)

『ブルーロック』の入口は、かなり乱暴です。

マガポケ公式の作品紹介では、2018年W杯で日本代表がベスト16止まりだったことを起点に、「狙うは“W杯優勝”」と掲げられています。そして課題として置かれるのが、「絶対的エースストライカーの不在」。そのために、300人の青少年FWが集められます。

最初から、話がデカいんです。

高校生FWたちのサバイバルを見せる前に、作品は読者の前に「日本代表のW杯優勝」を置いてくる。僕はここで、逃げ場をふさがれた感じがしました。

だって、日本代表に優勝してほしいという気持ちは、サッカーファンなら心のどこかにあるはずです。でも普段は、そんなに簡単に口に出せない。現実を知っているからです。世界の強豪がどれだけ分厚いかも、W杯で一つ勝つことがどれだけ難しいかも、嫌というほど見てきた。

それでも『ブルーロック』は、そこを遠慮しません。「ベスト16でいいのか?」「組織力だけで満足なのか?」「世界一になるなら、最後に誰がゴールを奪うんだ?」と、読者の胸ぐらをつかんでくる。

TVアニメ公式サイトでも、“ブルーロック”プロジェクトは「日本をW杯優勝に導くストライカー」を育てるための計画として紹介され、「世界一のエゴイストでなければ、世界一のストライカーにはなれない」というコピーが掲げられています。

この言葉が刺さるのは、潔たちがエゴイストだからだけじゃありません。読む側にも、もう火種があるからです。

日本代表に優勝してほしいし、強豪国を倒してほしい。最後は日本の選手がゴールを決めて、世界中を驚かせてほしい。普段はそこまで言わないだけで、そういう欲はたしかにある。

『ブルーロック』は、その欲を最初のページから遠慮なく踏んできます。

僕は2022年のドイツ戦から、善戦だけでは満足できなくなった

サッカースタジアムで歓喜するサポーターたちと、勝利への期待が高まる日本代表戦のイメージ2022年ドイツ戦のイメージ(AI生成)

2022年カタールW杯のドイツ戦で、日本は堂安律選手と浅野拓磨選手の得点によって2-1の逆転勝利を収めました。JFA公式でも、4度の優勝経験を持つドイツを相手に、日本が後半の反撃で逆転した試合として記録されています。

あの堂安のシュートを見たとき、僕は声が出ました。綺麗な崩しだったとか、戦術的にどうだったとか、あとからならいろいろ言えます。でもその瞬間に残ったのは、もっと単純な感覚でした。堂安が、ゴール前で迷わず左足を振った。あの一振りが、試合の空気を変えた。

そのあと、浅野が抜け出して決めました。角度のないところから、ドイツ相手にぶち抜いた。あの試合のあと、僕の中で「日本代表にどこまで期待していいのか」の線が変わりました。

それまでは、ベスト8が大きな夢だった。でも、ドイツに勝った。スペインにも勝った。

スペイン戦でも、日本は堂安律選手と田中碧選手の得点で2-1の逆転勝利を収め、グループEを1位で突破しました。JFAのワールドカップヒストリーでも、堂安選手の同点ゴール、三笘薫選手の折り返し、田中碧選手の得点が整理されています。

あそこまで見てしまったら、もう戻れません。「日本はよく頑張った」で終われないし、「次はベスト8だね」だけでも足りない。いつか本当に、W杯を獲ってほしい。僕はそう思うようになりました。

これは、かなり欲深い願いです。

でもサッカーを見るって、たぶんそういうことでもある。勝てるかどうかを冷静に計算するだけなら、こんなに熱くならない。無理かもしれないとわかっていても、見たい景色があるからテレビの前に座る。

久保がボールを受けて前を向く。三笘が相手のサイドバックと向き合う。伊東が背後へ走る。堂安がゴール前に入ってくる。そういう瞬間に、僕はどこかで思ってしまいます。この選手が、試合を壊してくれないかと。

『ブルーロック』を読んでから、その感覚に名前がつきました。

エゴです。

潔たちのエゴを見て興奮しているつもりだったのに、読み進めるほど、自分の中にも同じ種類の欲があることに気づかされる。日本代表に、世界を獲ってほしい。かなり勝手な願いです。でも、その勝手な願いを燃やしてくるから、『ブルーロック』はサッカーファン兼作品ファンに刺さるんだと思います。

正直、そろそろ潔たちのA代表W杯が見たい

夜のスタジアムを見つめる観客と、まだ見ぬワールドカップ本戦への期待を表現したサッカーの風景BLUELOCKのW杯での戦いのイメージ(AI生成)

ここが、作品読者としての物足りなさです。

2026年6月21日現在、現実ではW杯が進んでいます。JFA公式の2026年W杯日程では、日本代表はグループFでオランダ、チュニジア、スウェーデンと対戦する流れになっています。

JFAの放送情報でも、6月21日13時キックオフの日本対チュニジア戦が掲載されています。現実は、もうW杯のど真ん中です。

なのに『ブルーロック』は、まだA代表W杯に行っていません。

マガポケ公式では第312話のタイトルが「U-20 WORLD CUP」とされ、第347話「DESTINY」も2026年5月27日公開回として掲載されています。

もちろん、U-20W杯がつまらないわけじゃありません。むしろ面白い。潔たちが世界の同世代とぶつかるのは熱いし、ブルーロック計画がどこまで通用するのかを見る場所としても大事です。

でも、正直に言うと、僕は焦れています。そろそろA代表W杯が見たい。

潔たちが日本代表のユニフォームを着て、世界のフル代表と戦うところが見たいんです。ドイツやスペインやブラジルやフランスを相手に、ブルーロックで育ったエゴが本当に通用するのかを見たい。

たぶん、この焦れは僕だけじゃないはずです。『ブルーロック』は最初に「W杯優勝」を置きました。だから読者は、ずっとその先を待っている。

ブルーロック計画は、日本を世界一にできるのか。潔はA代表の中心になれるのか。絵心甚八のめちゃくちゃな理屈は、最後に正しかったと言えるのか。A代表W杯は、その答えを出してしまう舞台です。

だから、まだ簡単には行かない。

これは作者が明言した話ではありません。ここからは僕の考察です。『ブルーロック』は、結果としてのW杯優勝をすぐに見せる漫画ではなく、そこへ向かえるだけのエゴがどう作られていくのかを見せる漫画なんだと思います。

いまA代表W杯を描いたら、気持ちはかなり満たされます。でも、満たされた瞬間に、作品は最初に掲げた夢の答え合わせへ入ってしまう。だからまだU-20にいる。

いや、わかる。わかるんです。

でも、こっちはもう見たい。

この「わかるけど見たい」が、いちばん厄介です。作品に文句を言いたいわけじゃない。むしろ、期待しているから焦れている。現実のW杯を見ながら、作中のA代表W杯を待ってしまう。その距離がある限り、『ブルーロック』はまだ僕の中で終わりません。

『ブルーロック』は、僕らの「日本に勝ってほしい」を煽ってくる

青い炎の渦が立ち上るスタジアムで、日本代表の勝利を願うサポーターたちが熱狂する様子盛り上がる日本代表戦のイメージ(AI生成)

金城宗幸さんの発言を読むと、『ブルーロック』が最初から王道の青春サッカー漫画をなぞろうとしていたわけではないことがわかります。

マガポケベースの対談で金城さんは、『DAYS』と同じ土俵で戦うより、違う企画にする意識があったことを語っています。さらに、「FWを描いてみたい」という自分の欲と、「新しいサッカー漫画を読みたい」という読者側の需要をすり合わせた結果、『ブルーロック』ができていったと話しています。

同じ対談では、『DAYS』とは違うサッカー漫画にしたいと考え、「バトル漫画」っぽい要素を取り入れたことも語られています。

アニメ!アニメ!のインタビューでも、金城さんはサッカー漫画・アニメへの固定概念があまりなかったからこそ『ブルーロック』のような作品を作れたと話し、王道路線とは違うやり方を編集担当と相談したと語っています。

ここで僕が面白いと思うのは、『ブルーロック』が現実の代表論をそのまま描いていないところです。

現実のサッカーは、もっと複雑です。守備がある。連携がある。コンディションがある。相手との相性もある。大会の流れもある。W杯で勝つには、ストライカーひとりのエゴだけでは足りません。

そんなことは、サッカーファンならわかっている。

でも、それでも見たいんです。

ゴール前で遠慮しない選手。自分が決めると言ってボールを呼ぶ選手。外しても次にまた打つ選手。世界の空気を、一発で変えてしまう選手。

『ブルーロック』は、現実のサッカーからそこだけを切り出して、異常なくらい濃くしています。パス一本にも、トラップ一つにも、シュート一本にも、やたらと命が乗っている。ピッチの上なのに、読んでいる感覚はバトル漫画に近い。

でも僕は、そこに乗せられるのが嫌じゃない。だって、こっちにも願望があるからです。

日本代表に勝ってほしいし、強豪国を倒してほしい。できることなら、いつかW杯を掲げるところまで見たい。普段はそこまで口にしないだけで、サッカーファンの中にはそういう欲がちゃんとあると思うんです。

『ブルーロック』は、その欲をきれいごとにしない。むしろ「そこまで欲しがっていいだろ」と、こちらの遠慮を外してくる感じがあります。

そして、ここから少し先の話をしたい。

昔、『キャプテン翼』を読んでサッカーを始めた子どもたちがいました。翼くんに憧れて、ボールを大事にして、ゲームを作る選手に惹かれた子も多かったと思います。そこから、日本には本当に素晴らしい選手たちが育ってきました。

じゃあ、『ブルーロック』を読んだ子どもたちはどうなるのか。

僕は、かなり楽しみにしています。

ゴール前で遠慮しない。自分が決めると言ってボールを呼ぶ。外しても、次もまた打ちにいく。そんなエゴ丸出しのサッカーで、僕たちサッカーファン兼作品ファンを楽しませてくれる選手が出てくるかもしれない。

漫画の影響って、バカにできません。

翼くんがそうだったように、潔世一や蜂楽廻や馬狼照英が、どこかの子どものプレーを変えるかもしれない。その子がいつか日本代表のユニフォームを着て、ゴール前で迷わず足を振るかもしれない。

そんなことまで考えてしまうから、『ブルーロック』はずるいです。

まだ答えを見せてくれないから、追いかけてしまう

スタジアム中央に輝くトロフィーを見つめながら、日本代表のワールドカップ優勝を夢見るサポーターの後ろ姿日本代表の優勝に夢を見るファンのイメージ(AI生成)

潔世一は、自分の武器を更新しながら試合の中心を奪いにいきます。馬狼照英は、自分が主役としてゴールを奪わなければ意味がない。凪誠士郎は、才能が欲を持った瞬間に動き出す。蜂楽廻は、自分の感覚で世界と遊び直す。糸師凛は、世界基準への怒りを抱えたまま前へ進む。

彼らは、現実の日本代表選手の代わりではありません。誰かのモデルとして重ねる必要もない。でも、僕たちが日本代表に見たいものの形ではあると思います。

世界を相手にしても、前に出る。ゴール前で責任を持つ。自分の武器で試合を変えにいく。僕は、そういう選手を見たい。

2022年のドイツ戦を見たあとから、その欲はかなり大きくなりました。『ブルーロック』を読んでから、その欲はさらに言葉を持ってしまいました。

たぶん僕は、『ブルーロック』を読んでいる間、潔たちの試合だけを見ているわけではありません。どこかで、現実の日本代表の未来まで勝手に重ねています。

潔がゴール前へ入っていくたびに、現実の代表にも、こういうふうに試合を自分のものにしようとする選手がもっと出てきてほしいと思ってしまう。かなり勝手な願いです。でも、その勝手さを隠さずに読ませてくるところが、『ブルーロック』の怖さであり、面白さでもあります。

だから僕は、まだA代表W杯を待っています。早く見たい。でも、まだ見せてくれない。その物足りなさごと、たぶん僕はこの作品に乗せられています。

FAQ

『ブルーロック』はなぜ面白いのですか?

キャラや試合展開の面白さに加えて、日本代表にW杯優勝してほしいという読者側のエゴを刺激してくるからです。特にサッカーも『ブルーロック』も好きな人ほど、作品の中に「日本が世界を倒す未来」を重ねやすいと思います。

『ブルーロック』のエゴとは、ただのわがままですか?

この記事では、単なるわがままではなく、自分の武器で試合を動かし、ゴールに執着する欲として扱っています。仲間を無視することではなく、勝敗の中心に自分の力を置こうとする姿勢に近いです。

なぜ『ブルーロック』はまだA代表W杯を描かないのですか?

公式に明言された理由ではありませんが、僕はA代表W杯がブルーロック計画の大きな答え合わせになるからだと考えています。そこを描くと、作品が最初に掲げた「日本代表のW杯優勝」という夢に大きく近づくため、まだU-20の段階でエゴが作られていく過程を描いているのだと思います。

この記事は日本代表批判ですか?

違います。日本代表に足りないものを断定する記事ではありません。日本代表が強豪国を倒す瞬間を見てしまったからこそ、僕たち読者が「優勝まで見たい」と欲深くなっている、という読者側の心理を考察しています。

キャラ考察は入っていますか?

少しだけ入れています。ただし中心はキャラではありません。潔世一や馬狼照英たちは、読者が日本代表に夢見てしまう「世界をこじ開ける個」の形として最後に触れています。

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参考情報

この記事では、『ブルーロック』公式・マガポケ掲載情報、金城宗幸さんのインタビュー、JFA公式の日本代表情報を参照しました。作中で確認できる事実と、筆者である僕の考察は分けて記述しています。

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