「クリリンのことか!?」大人になって初めて気がついた。
悟空とクリリンを比較する記事って沢山あるよね。二人の友情や一緒に戦ったシーン、はたまた、二人の間にはじつは友情がないなんて記事まで。
でも、僕が今日伝えたいのは、二人の話じゃなくて、社会にでてぼろ雑巾のようになった僕が、いまドラゴンボールを読んで感じることだ。
学生時代はサッカー部だった。花形選手じゃなかったけれど、いつか悟空のような強い男になれると夢見ていた。
社会へ出て5年経った今。仕事でくたくたになって帰って、コンビニ飯の容器だけ片づけて、ソファに沈む。風呂は無理。スマホも見たくない。で、手が伸びたのが『ドラゴンボール』だった。
比べられたり、失敗したり、思ったように結果が出ないことが増えた。そして思った、悟空みたいに生きるのは無理なんじゃないかって。
何回も読んでるはずなのに、そのページでだけ指が止まった。なんで止まったのか、自分でもうまく説明できなかった。
「ああ、今の自分に近いのは、悟空じゃなくてクリリンだな」って。努力しても報われない日があって、守りたい人がいるのに、どうにもならない瞬間があって、それでも、何事もなかった顔で立ち上がろうとする。
そういう姿に、理由はうまく言えないけど、心が反応してしまった。
強さってなんなんだろう、と最近よく考える。
少なくとも、大人になった今は、そんなふうに感じている。
※これは、社会へ出て5年目、もう新人扱いはされない。上手く行くこともあるけど、上手く行かない事の方が圧倒的に多い僕が、クリリンの行動に自分を重ねて癒される記事です。
悟空とクリリン──“強さ”の意味が変わる瞬間

若い頃は、悟空のように「強くなりたい」と思っていた。努力して結果を出すこと、それがすべてだと、疑いもしなかった。
でも社会に出て、挫折したり、思い通りにいかない時間を重ねていくうちに、あるとき、ふと考えるようになった。悟空は好きだけど、あの生き方は、たぶん自分にはできないなって。
強敵が現れた時、悟空は、強敵との戦い自体を楽しんでいる。クリリンには、強くならないといけない場面ばかりが回ってくる。
それでも、誰かが倒れたとき、いちばんに駆け寄るのは、いつもクリリンだった。クリリンは、弱った仲間をほ放っておけない、その人の隣に立とうとする。
クリリンを見て、なんか悔しくなった。
派手な戦いじゃないし、勝ち負けで測れるものでもない。守ろうとした瞬間だけは、たぶん少し強くなってる。たぶんだけど。
倒れないことよりも、何度でも立ち上がろうとする姿。自分の現実を重ねてしまう理由は、たぶんそこにある。
共感の名シーン3選──クリリンが生きた「報われなくても輝く道」

努力しても、何も返ってこない。手応えもなくて、誰にも褒められず、「今日は何をやってたんだろう」と思いながら眠る夜。
そんな夜にはクリリンのページを開いてしまう。クリリンの姿と、はっきりしないままの自分を重ねてみたいからだと思う。
悟空みたいに突き抜けられるわけでもない。
ベジータみたいに誇りを盾にできるほど、強くもない。
はっきりしていなくてもしょうがない。自分にできることを少しずつでも進めればいい。だって、僕は悟空じゃないんだから。
どれも派手ではないし、物語として“報われた”と言えるかどうかも、わからない。でも、僕はこのクリリンの姿を見て癒されるんだ。
ナメック星での犠牲と勇気
第27巻のナメック星。フリーザを前にしたクリリンは、悟空みたいにニヤッとはしない。「怖い」って感情が顔に出てる。
それでも前に出る。悟空の援護で時間を稼ぐため。勝てる気はしてないのが伝わってくる。そして、あっさり殺される。爆殺。読んでて「ふぅ。」とため息が漏れた。
昔の僕は「またやられ役か」で終わってた。
去年の4月、部長が後輩の名前を第二四半期の予算未達で呼んだ瞬間、会議室の空気が凍った。火の粉が飛んでくるのが怖くて、僕は何も言えず、資料を持つ手が汗で滑った。
結局、その日は何も言えなかった。
会議が終わったあと、後輩は「大丈夫です」と笑っていたけど、目は笑っていなかった。
僕はその日の帰り道、コンビニの前で5分くらい立ち止まったまま動けなかった。
で、次回はどうする?
部長は怖い、でも、後輩は守ってあげたい。
ビビってる。怖いけど行く。それがクリリンの強さだ。クリリンならきっとそうする。
人造人間18号との関係に見る「愛する覚悟」
第29巻。18号にキスをされて固まるクリリン。あの場面は、18号がクリリンをバカにしているように感じたが、女性に免疫がないクリリンは恋に落ちたんだと思う。
敵だった相手だし、「なんで?」って本気で思っていた。しかも地球の命運がかかっている状況で恋愛感情?当時の僕には、正直理解できなかった。
でも今読むと、違う。
簡単に恋に落ちた浅はかさはお置いておいて、上手く言えないけれど、クリリンは18号を“敵”としてじゃなく、“一人の人間”として見始めたんじゃないかな。
トランクスから18号の起爆装置を渡された時は、押せば地球が救われるかもしれない。押さなければ、仲間に責められるかもしれない。
でも、クリリンは、これまで人間を守ってきたときと同じように、18号を守って、スイッチを押さずに装置を壊す。
正直に言うと、今でもあの選択が正解だったのかは分からない。もし自分がその場にいたら、スイッチを押していたかもしれない。それでも、押さなかったクリリンを、どこかで羨ましいと思っている。
たぶん僕は、思ってたよりずっと「見返り」を気にしてた。これ以上、自分を嫌いにならないように、クリリンを見習って、「見返り」を求めずに自分の信じたことをやろうと思ったんだ。
魔人ブウ編での“戦えない勇気”
18号と結婚して、娘が生まれたクリリンは戦いからは一歩引いている。第40巻で魔人ブウが現れたとき、仲間は前に出るが、クリリンは家族のそばに残る。
昔は、正直に言って嫌いだった。「ここは戦うところだろ」そう思っていたし、どこかでガッカリもした。
でも今は、あの選択のほうが重く見える。
社会人5年目、後輩もできた。なんでもこなせるカッコいい先輩じゃないなら「優先順位」を決める勇気が必要だと気づかされた。
評価も出世も理想も、全部ほしい。でも、全部は無理なんだろうなと思い始めた。まず守るものを決めなきゃだ。
だから今は、あの場面を“弱さ”とは思わない。
むしろ、あそこが一番人間らしい。
読者の人生に重なる“仲間との距離”
気づけば、連絡を取らなくなった仲間が増えていた。
仕事に追われて、返事を後回しにして、「また今度」が積もっていく。
ドラゴンボールの“仲間”って言葉が、いまだに胸に残るのは、ああいう関係が、自分の生活から少しずつ減っていったからかもしれない。
クリリンって、強い敵の前でも踏みとどまるけど、たぶん一番しんどいのは、戦いそのものより「自分は役に立ててない」と思う瞬間なんじゃないか、とたまに考える。
自分も同じで、何かを背負ってるつもりなのに、結果が出ないときほど人に連絡する気力がなくなる。
でも、だからこそ“誰かがいる”ってだけで救われる日がある。
励ましの言葉じゃなくて、ただ隣に座ってくれるみたいなやつ。
一人でどうにかしようとしてるときほど、
ほんとは誰かに見つけてほしいんだと思う。
ページを閉じたあと、少しだけ連絡してみようかな、と考えた。
実際に送るかは別として、そう思えたことが、今日の収穫だった。
結び:あの頃とは違う強さで、生きている

ここまで書いてきて、ひとつだけはっきりしたことがある。
僕はもう、悟空になりたいわけじゃない。
若い頃は、強くて、迷わなくて、前に出られる人に憧れていた。
でも今は違う。
うまくいかない日もある。評価されない日もある。それでも翌朝ちゃんと会社に行く。
それを弱いとは、今は思いたくない。
クリリンは無敵じゃない。勝てないことも多いし、倒れることもある。それでもその場に立ち続けた。
正直、あれが正解かは今も分からない。
でも、あのページだけは閉じられない。
誇れるほど強くなくてもいい。全部を取りにいかなくてもいい。
守るものを決めた、つもりだ。でも、明日また評価の話をされたら、きっと揺れると思う。それでも、前よりは少しだけ迷い方が変わった。
若い頃に思い描いていた未来とは、だいぶ違う。
正直、たまに悔しい。でも、クリリンのページを閉じたあとだけは、「まあいいか」と思える。


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