「キャラクターが可愛い」「設定がエモい」……それはもう、いろんなところで言われ尽くしていますよね。でも、この作品の魅力ってそれだけでしょうか?
劇的な大事件が起きるわけでもないし、時には「ただ2人が並んでタバコを吸って、他愛もない雑談をして終わるだけ」の回もある。それなのに、なぜ僕たちはこの物語にここまで引き込まれてしまうのか。
ちなみにこの記事を書いている僕は、数年前までガッツリ喫煙者でした。今はもう禁煙していますが、あの喫煙所でしか生まれない独特な会話の空気はいまだに体に染みついています。
今回はそんな元喫煙者の視点から、原作単行本とアニメの先行配信をどちらもガッツリ追いかけた上で、この作品に惚れ込んだ理由を本音で語らせてください。
今はどこに行っても禁煙、値上げも続いて「タバコなんて時代遅れの古い文化」と言われる令和の時代です。そんな逆風の中で、なぜこの漫画がここまでたくさんの人に愛され、アニメ化までトントン拍子で進んでいったのか。
うまく言えないんですけど、タバコを辞めた僕だからこそ、胸にズドンと響いたこの作品の本当の魅力を、1人のファンとして語り尽くします。
漫画『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』の「人気の理由4つ」
ふたりでたばこを吸うイメージ(AI作成)
あの裏口の空気感の何がそんなに僕らの心を捉えるのか。元喫煙者の目線で、この作品が人気を集めている理由を僕なりに考えてみました。
① 減り続ける「他愛のない雑談」ができる場所
さっきも書いた喫煙所の空気と同じで、利害関係のない佐々木と田山が交わすスーパーの裏口での時間は、今の僕たちが普段の生活の中でふと恋しくなる場所そのものだと思うんですよね。
会社の肩書や人間関係に疲れたとき、誰かとただくだらないやり取りをする。そんな何気ない時間が流れる様子を眺めているだけで、読んでいるこっちまで不思議とホッとします。
② スマホを置いて煙を眺める「5分間」の心地よさ
タバコを1本吸うのって、だいたい5分くらいなんです。常にスマホの通知に追われている日常の中で、その5分間だけスイッチを無理やり切って、ただ煙を眺める。
この漫画を読んでいると、その「あえて何もしない5分間」を、自分も一緒に過ごしているような気分になります。
だからこそ、特になんでもない回であっても、僕はあの穏やかな時間に何度も付き合いたくなってしまうのです。
③ 「裏口」という秘密を共有する大人のロマン
世間からタバコが煙たがられている「今」だからこそ、このシチュエーションが最高に効いてくると思うんです。
「スーパーの裏口という隠れた場所で、世間の目を盗んで2人だけで吸っている」という状況に、大人ならではの秘密の共有感が生まれる。誰もがどこでもタバコを吸えた昭和の時代だったら、この特別な空気感は絶対に作れなかったはず。
時代の逆風を、逆にお話の面白さに変えてしまう設定が本当に上手いなと感じます。
④ 山田と田山の絶妙なギャップと、見守る店長の視点
品行方正な癒やし系店員の「山田さん」が、一歩裏口に出るとパンクな服装でタバコを吹かす「田山」になる。このギャップが猛烈にカッコよく、なんだかすごく魅力的に映ります。
佐々木だけが真実に気づいていないもどかしさも、僕ら読者にとっては最高のご馳走です。
ちなみに、この2人の絶妙な絡みを陰からニヤニヤ見守りながら自分の癒やしにしているスーパーの店長が作中にいるのですが、あの店長の視点って、完全に単行本を読んでいる僕たちそのものなんですよね。
あの空気感を「ずっと眺めていたい」と思わせる説得力が、あの裏口にはあります。
元喫煙者の僕がハッとした、世間から消え去った「あの5分間」
スマホを伏せてのんびりとたばこをふかすイメージ(AI作成)
ここが、個人的には一番刺さったところです。喫煙者がどんどん減っている今の時代に、なぜいまさらタバコをテーマにした作品がここまでウケるのか。
先ほども書いた通り、僕はすでにタバコを辞めた人間ですが、だからこそ作中の「スーパーの裏口」という空間の意味が痛いほど分かります。
僕も昔、仕事で嫌なことや頭がパンクしそうなことがあると、すぐに喫煙所に逃げていました。スマホをポケットにしまって、ただ煙が消えるのを眺めながら、5分だけ外の空気を吸う。それだけで、不思議と気持ちが切り替わったんですよね。
今の世の中、効率ばかりが重視されて、真っ先に削ぎ落とされたのがこの「無駄な隙間の時間」です。
タバコを吸わない人はもちろん、僕のようにあの場所をなくしてしまった人間にとって、佐々木と田山が過ごす裏口の時間は、たまらなく愛おしくて、どこか羨ましい「理想の隠れ家」に見えるのではないでしょうか。
SNSの数ページからアニメ化へ!読者と一緒に育った空気感
ここで、この作品が歩んできた、ちょっと信じられないくらいの異例のスピード感も振り返ってみます。作品がこれほどの人気を獲得した裏には、この売り出し方の熱量もありました。
- 2022年3月: 地主先生が個人のXに数ページの創作漫画を投稿。これがすべての始まり。
- 2022年8月: 圧倒的なバズを背景に、わずか数ヶ月で『月刊ビッグガンガン』で商業連載がスタート。
- 賞レース席巻: 「次にくるマンガ大賞 2022」Webマンガ部門で第1位を獲得。
- そして現在: 待望のテレビアニメ放送へ。
タイムラインで「ものすごい漫画を見つけてしまった」と震えたあの時の熱量を、そのまま商業連載、そしてテレビ画面へと繋いでいった感覚。
あの時から、ただの漫画紹介ではなく「みんなで見守って、一緒に大きくしていった作品」みたいな空気がファンの中にありました。
このワクワク感をリアルタイムで共有できたことも、僕たちファンが夢中になった理由のひとつだと思います。
アニメ先行配信を観て確信した、声優陣の演技のリアルさ
少し照れくさいですが、最初は「あの原作独特の絶妙な間や、空気感をどこまでアニメで再現できるのかな?」と半分くらいは疑っていました。
でも、ABEMAの先行配信を1話観終わる頃には、そんな不安は一瞬で消え去っていました。声優さんの声のトーンが、僕らの脳内再生のイメージそのものだったからです。
特に佐々木の演じ分けには驚きました。
- 仕事で完全にすり減った、くたびれた声
- 大ファンの山田さんにレジで会った瞬間、ちょっと裏返る嬉しそうな声
- 裏口で田山と一緒にいる時の、安心してトーンの落ちた落ち着いた声
この佐々木の日常のリアルな声のギャップがあるからこそ、田山が佐々木をおちょくる時の「イタズラっぽい声」が最高に引き立つんですよね。
個人的には、1話で佐々木が「田山さん」の名前を初めて呼んだ時の、あのちょっと照れたような、でも妙に落ち着く低いトーンを聴いた瞬間、「あ、このアニメは間違いないな」と確信しました。
余計な説明を省き、タバコを吸い込む息遣いや「沈黙」で魅せる制作陣の姿勢が、音と映像からビシバシと伝わってきました。
まとめ:正直、禁煙した今でもあの時間が少し羨ましい
人がいない喫煙所のイメージ(AI作成)
『スーパーの裏でヤニ吸うふたり』は、普通の日常コメディやラブコメとはちょっと違います。毎日忙しく生きている僕たちに、「お互いの名前すらよく知らないのに、ただ並んでタバコを吸うだけの5分間」をそっと分けてくれるような物語です。
正直、禁煙してタバコそのものが恋しいわけじゃないんです。でも、この漫画を読むと、昔の喫煙所で過ごした「あの5分」を少し思い出します。あの何気ない雑談の時間は、今でも少し羨ましく感じてしまいます。
タバコを吸う人も、吸わない人も、かつて吸っていた人も。アニメのまったりした空気感に浸りながら、あるいは単行本のページをめくりながら、佐々木や田山が過ごすあの裏口の空気を、一緒にのんびり味わってみませんか?


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